医学的に見た男性不妊の原因は?

ドラマなどでは、結婚したにもかかわらずなかなか妊娠しないような状態だと、何かと女性のせいにされます。

若い妻がお姑さんから嫌味を言われるというようなシーンをよく見ますが、実際の所、何でもかんでも女性のせいにして女性は濡れ衣を着せられている、と言わざるを得ません。

現在不妊症のカップルは、10組に1組以上いると言われています。

そのうち女性のみに原因がある場合は41%、男女両方に原因がある場合が24%、男性のみに原因がある場合が24%で、約半数は男性側に何らかの原因があることが判っています。

不妊症は、女性のせいとは言えません。

大阪大学泌尿器科や健保連大阪中央病院が2193例を検討したところ、男性不妊の原因で一番多いのは、精子形成障害で2052例で、男性不妊の93.6%を占めていました。

2番目が精路障害で77例、3番目は副性器感染症で37例、4番目が精機能障害で27例でした。

精子形成不全をさらに分析していくと、1番多いのは特発性で1277例もありました。特発性と言うのは、原因がよくわからなかったり特定できていない病態です。

2番目は精索静脈瘤が612例でした。精索静脈瘤は、一般成人男性の1割くらいで見られることが判っています。しかし、手術によって精液検査所見の改善や自然妊娠率の上昇が期待できる疾患です。

そして染色体異常(Klinefelter症候群など)が51例、停留精巣が33例、ゴナドトロピン欠乏症や高プロラクチン血症などの内分泌障害が31例、精巣炎が21例、その他27例と続いています。

精子形成不全と一口に言っても、このようにその詳しい病態は様々です。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の場合は、ホルモン治療を行うことによって高い効果が期待できます。

近年は自己注射も認められるようになり、無精子症の状態が持続していた患者さんでも約85%が基準値を超える精子が認められるようになった、という報告もあります。

精巣形成障害の次に多い病態は、先天性精管欠損症や精管閉塞症、ヘルニアの術後などによる精路通過障害で77例でした。

3番目に多いのは、膿精液症や精巣上体炎、精管炎などの副性器感染症で37例、そして性交障害や射精障害などの性機能障害が27例でした。

これらの治療にはPDE阻害薬と呼ばれる薬があります。商品名ですと、バイアグラ、レビドラ、シアリスです。症例によってはカウンセリングや認知療法などが有効なこともありますので、心療内科やメンタルクリニックとの連携も大切です。
また、治療に時間がかかるので、そのことをよく認識し根気よく治療を受ける覚悟も必要です。

糖尿病などの生活習慣病があると、勃起障害になるリスクが高まります。近年、コンビニエンスストアや深夜まで営業しているファミレスや24時間営業のスーパーマーケットやレストランなどもあり、深夜に飲食するひとも増え、食生活が欧米化しています。

このような生活背景も勃起障害の一因となっていますので、生活習慣の改善も大切です。

また、精液検査で精液量や精子濃度などを調べますが、近年一般成人男性の精子濃度が著しく低下しています。

一昔前は1ml当たり1億以上が基準値であったのが、1999年は2000万となり、2010年には1500万と減少する一方です。この先、どこまで減り続けるのかと、懸念されています。

これも、生活習慣と何らかの関係があると考えられています。

精巣機能障害の一番重症な病態は、非閉塞性無精子症と考えられています。

この場合は、手術によって精巣から直接精巣組織を取り出して精子を探します。精巣の中には精細管と言う細い管が沢山ありますが、それらは均一ではないことがあります。細い精細管には精子が存在しなくても、太い精細管であれば、精子が存在している可能性が高いです。

顕微鏡で注意深く観察すると精子が見つかることがあります。これが、顕微鏡下精巣内精子採取述と言われる術式です。

採取した組織は培養士が顕微鏡ですぐに検鏡し、精子の有無を確認します。精子が見つかるまで精巣の中を探します。

精子が見つかる確率は、医療機関に寄って多少の差はありますが、約4割程度です。

男性不妊かどうかを検査してもらうために、男性は婦人科を受診しなければならないことが多いのが今の日本の不妊治療の現状です。女性ばかりの婦人科外来の端っこの方で、あるいは少し離れたところで肩身の狭い思いをして小さくなって診察を待っておられます。

時には婦人科の女性医師に、羞恥心や苦痛の強い検査をされることもあり、それに耐えながら検査を承諾して受けている若い男性の姿を見ると、気の毒としか言えない状況です。

日本生殖学会のホームページによると、学会が認定する生殖医療専門医は2016年4月の時点で596人いますが、ほとんどが産婦人科医で、泌尿器科医は約40人ほどしか在籍していませんでした。
一番多い大阪でも10人でした。

泌尿器科医で日本生殖学会が認定する生殖医療の専門医は、日本生殖医学会のホームページから探すことができます。

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