『夫のちんぽが入らない』を読んでみた

最初に書いておきたいのですが、私は長年不妊治療をしています。不妊治療をしていなかったら、この本に興味を抱かなかっただろうし、逆にこの本のタイトルを見ただけで敬遠していたかもしれません。(そのくらい直接的なタイトルですよね!)

私は元々著者こだまさんのブログの読者でした。本当に面白い文章を書く人なのです…!でも同時にすごく深い影があって、読んでいてヒリヒリするのです。でもそこがとても魅力なのでした。そんなこだまさんの本なら絶対に買わねばと思い発売日当日に購入しました。

読んだ直後に思ったことは、この本は「こだまさんからの御主人への告白の手紙なのだ」ということです。それは愛の告白でもあるし、真実の告白でもあるし、ある意味遺書のようなもの。あとがきでも書いておられますが、いつか自分がいなくなったときに夫に見つけてほしい話。

これはこだまさんの自伝小説ですが、その壮絶な過去が静かにそして面白く語られていきます。壮絶は壮絶なのですが、実は誰にでも少なからずあるような心の奥にしまってきっと一生誰にも話せないようなエピソードが詰まっているんです。

もちろんタイトルの通り“夫のちんぽが入らない”話なのですが、母親との関係、教師として過ごす学校での軋轢、誰にも相談できないまま担任しているクラスが学級崩壊へ進んでいく…と同時に、心が壊れていくこだまさん。
そこに夫とのセックスで“ちんぽが入らないこと”が根っこに静かにでも確実に留まり続けています。ちんぽが入る側の私でも共感で、読んでいて苦しくなりました。
きっとこだまさん自身、身を削りながら文字にしたんだろうな…と、想像するだけで胸が痛くなる本でした。

私も子供ができないことを夫に対して申し訳なく思っていて(こだまさんが抱えているものは私の問題とは全く違うとは思いますが)、でもそれは日常生活の中で顔を出させないように普通に笑ったり話したりして生活しています。でもそういう人は実はいっぱいいて、それが人生なので、諦めても生きていかなければいけないんだということを日々感じています。

でもそんな風に過ごしている人がいるということに気づかない人も多いんですよね。特に大多数の普通の幸せを普通に持っている人。
例えば「子供はまだなの?」なんて日常的に良く聞く会話ですが、それって「セックスしてるの?」って聞いてくることと変わらないんじゃないかって私もずっと思っていました(この本にはそういったエピソードも多く出てきます)。
私たちのような者たちはそんな場面で少しずつ傷つきながら、でも自分が悪いので傷ついたりしてはいけないと、傷ついたことを普通の人に悟られないようにと思いながら生活しています。そういう人がいることをこの本を読んだら想像してもらえるかな、と僅かに期待してしまいます。何か配慮してほしいわけではなく、想像してもらえるだけでいいのです。

今、誰かを変えたいわけじゃない。誰も悪くないし、諦めだけじゃなくて生活の中で小さな希望もある。でも自分がこの世から消えたときでいいから、いつか夫にだけは知ってもらいたい痛み。それを形にしたのがこの本なのです。

たくさんの人にこの本を読んでもらいたくてこのレビューを書いています。問題を抱えている人、幸せな人、子供がいる人にも、いない人にも、独身の人にも、もう孫がいる人にも、本当は私の母にだって読んでもらいたいような、そんな本です。

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